オゾンの殺菌力・ウイルス不活化のメカニズムについて

監修:ミナカタ消毒代表:宮崎圭佑

科学修士(MS)京都大学
京都大学医学研究科人間健康科学専攻修了、一般医療機関勤務、京都大学医学部附属病院研修を経て、ミナカタ消毒株式会社を独立、京都府(乙種)消毒主任責任者

 

オゾンには高い殺菌力、ウイルス不活化の作用があります。日本環境学会の調査では、オゾン水はエタノールや次亜塩素酸よりも高い殺菌力を持つと報告されています。これはオゾンの強力な酸化力が、細菌の細胞膜やウイルスの皮膜構造を破壊するからです。オゾンを利用した殺菌、ウイルス不活化について詳しく解説していきます。

 

オゾンによる溶菌(ウ)作用とは?

オゾンに殺菌・ウイルス不活化作用には科学的なメカニズムがあります。まずオゾンは酸素分子に酸素原子がくっついた不安定な構造をしています。この不安定なオゾン分子から酸素が飛び出すと、相手の分子を酸化させる(つまり自分は電子を奪う作用があります。

 

細胞周辺の水分によって、まずオゾンが分解してヒドロキシラジカル(OH−)を発生させる。ヒドロキシラジカル(※OH)の酸化作用により、細胞壁を破壊する。

細菌はタンパク質と多糖、脂質からなる細胞壁、細胞膜からできています。ウイルスの場合はエンヴェロープと呼ばれるタンパク質の膜や核酸の殻で覆われています。この膜や殻の構造がオゾンにより酸化されることで壊れて溶けてしまいます。このような微生物の構造破壊は「溶菌(ウ)」と呼ばれています。

「溶菌(ウ)」が、通常の薬剤による殺菌と異なるのは、耐性菌をつくらないことです。薬剤による殺菌は細胞の核に作用します。ですので薬剤を汲み出すことや変異してしまうなど耐性をつけてしまうのです。しかし、オゾンによる溶菌(ウ)は、物理化学的な反応を利用した構造破壊を行うため、特定の薬剤成分と異なり、オゾンによる溶菌(ウ)は「耐性菌」をつくりません。

 

オゾンによる殺菌・ウイルス不活化方法

オゾンによる殺菌・ウイルス不活化方法には2つの方法があります。1つはオゾンガスを用いる「オゾン燻蒸法」であり、もう1つはオゾンと水を反応させる「オゾン水」による方法です。

オゾン燻蒸法

高濃度のオゾンガスを空間に充満させることで、殺菌・ウイルス不活化を行います。主に空気中を浮遊するノロウイルスやインフルエンザ、コロナウイルスなどに有効性が確認されています。結核病棟などでも、患者使用後の部屋を物品ごとオゾン燻蒸で殺菌・不活化しています。燻蒸に求められるオゾン濃度は高く、吸い込むと人体(主に肺)に有害でです。ですので一般的に、オゾン燻蒸は無人環境下で行います。

微生物に対する効果は、オゾン濃度だけではなく、気温、湿度、紫外線照度、また室内の還流状況によっても変わります。気温が高いと化学反応活性が増します。紫外線はオゾンの反応を加速させます。

また何より重要なのが「湿度」です。細菌やウイルスの膜構造を破壊するのに重要なのは「水」であり、水とオゾンが反応することによる※OH(ヒドロキシラジカル)が、高い酸化力を持ちます。

以下、気体条件下での細菌胞子のオゾンによる死滅経過と湿度の関係をグラフ化しました。

湿度95%(水色)、90%(青)、湿度80%()、湿度70%(オレンジ)、湿度50%() 細菌胞子のオゾンによる死滅経過と湿度の関係 Ishizaki K(1968)

オゾン燻蒸法にとって、まずオゾン濃度と接触時間(CT値)が重要であり、次に湿度(水)が重要であることが分かります。湿度は気温上昇の影響を受けますので、高温多湿の夏場はオゾン燻蒸の反応が良いことになります。冬場は燻蒸環境を作ってあげなければいけません。

オゾン燻蒸法(ガス)の殺菌・ウイルス不活化効果

※気体(燻蒸法)の場合は、オゾン濃度(mmg/L)✕接触時間(t)を指標とします

微生物の種類 CT値 不活化率 参照実験
COVID19 330 99%以上 奈良県立医科大学
60 90〜99%
新型インフルエンザ(H1N1) 18 99.70% 北里大学
新型インフルエンザ(H5N1) 60 100% 北里大学
ノロウイルス 72 100% 昭和薬科大学微生物研究室
大腸菌 60 99%以上 昭和薬科大学微生物研究室
黄色ブドウ球菌 60 99%以上 昭和薬科大学微生物研究室
黄色ブドウ球菌 60 99%以上 昭和薬科大学微生物研究室
サルモネラ菌 60 99%以上 岡山工業技術センター

オゾン水

電気分解により、水中でオゾンを発生させる方法です。燻蒸(ガス)より、安全に利用できて殺菌・ウイルス不活化力も高いのが特徴です。一般的に「オゾン水」と呼ばれています。オゾン水は、数十分で分解してオゾン濃度が半分になる性質を持ちます。ですので、次亜塩素酸やアルコールのように作り置きをすることが出来ません。その都度、生成する必要があります。

 

水中オゾン処理による陽性球菌の生存率 T.Yamayoshi(1993)

オゾンの殺菌力、ウイルス不活化力は「水」と反応させることで最大の効果を発揮します。オゾンと水が反応することで、豊富なヒドロキシラジカル(※OH)が生成されます。この※OHの酸化力は酸素原子(O)より強いのが特徴です。この※OHは、細胞の細胞壁を破壊して、柔らかい細胞膜も破壊してしまいます。

オゾン水の殺菌・ウイルス不活化一覧

微生物の種類 オゾン水濃度 時間 不活化率 参照実験
COVID19 1ppm 10秒 99.9% 藤田医科大学
大腸菌 0.96ppm 5秒 100% 厚生労働省衛
ブドウ球菌 1.08ppm 5秒 100% 厚生労働省
インフルエンザ 0.96ppm 5秒 100% 厚生労働省
緑膿菌 1.01 5秒 100% 厚生労働省
犬パルボウイルス 0.96 5秒 100% 厚生労働省
鶏コクシジウム 1.92 30秒 100% 厚生労働省
カビ 0.3〜0.5 20秒 99.9 厚生労働省
酵母 0.3〜0.5 20秒 99.9 厚生労働省
結核菌 0.3〜0.5 30秒 99.9 国立感染症研究所